手のひらをティッシュで拭いてもらい、ぐったりとジェイの胸に寄りかかりながらも、どこか体の奥でうずきが止まない。慰めるように背中をさするジェイの手の動きが、快感のさざなみとなって再びペコに襲いかかってきていた。首筋に触れるジェイの手は、まるでそのことを知っているかのように、敏感な地点を触れては過ぎる。
ペコは顔を上げてキスをねだり、深く舌を絡めあう。そうしてジェイの顔をぼんやりとみつめ、
「まだ足りないって顔してるよ」
羞恥に頬を赤く染めながらうつむいた。
「そんなにいいの? 手首縛っただけなのに?」
「…知らねぇよ…っ」
けれど確かにうずきはおさまらない。自由にならないもどかしさが、何故か快感を増幅させる。
不意にジェイは立ち上がって、先程の缶を手に取った。
「最後の一枚だ。食べちゃってよ」
「…あんま、美味くないんだよなぁ」
そう言いながらもペコは口を開けて、なかに紙を放り込んでもらう。薄いりんごの味が口のなかに広がると同時に、また体が熱くなる。ふと中途半端におろされていたズボンを引っぱられ、思わず身をすくめた。ペコをベッドに腰かけさせ、ズボンを脱がすと、ジェイはハサミを手に取った。
「手、出して」
ハサミで紐を切られると、安堵と共にやるせなさが襲ってくる。けれどジェイはあらたに紐を切り、もう一度「手、出して」と言った。
「まだすんのぉ?」
「まだして欲しいって顔してるけど?」
ジェイのおかしそうな視線をよけてペコは手を差し出した。今度は手をクロスさせるような恰好で縛られた。さっきよりは幾分か腕が楽だ。そうして再び腕を拘束されながら、ペコはジェイに肩を抱かれ、首筋を舐められていた。
「ん…っ、あん…」
「やっぱり、いつもより感じてるよ」
「そんな、こと……あっ」
「その人としてる時もこんなふうだった?」
「…ジェイの方が、いい」
体の奥でうずきが止まない。ペコは口のなかに入れていた紙を舌に乗せて差し出し、捨ててもらう。ジェイは着ているものを脱ぐとあらためて唇を重ねてきた。激しく舌を絡めながら、ペコは鼻にかかった甘い声を何度も洩らす。そうして乱暴にベッドに押し倒されながら、心のどこかでもっとひどくしてくれと願っていた。
腕を押し上げられたまま首筋を舐められ、胸をまさぐる手が突起をこすり、そのたびにペコの体はびくびくと震え、再び下半身に熱が集まり始めていた。さっき一度達したばかりだというのに、早くも立ち上がろうとしている。
体を裏返し、ジェイは背中から腰へと唇をおろしてゆく。そうして不意に双丘のあいだに舌を滑りこませた。
「やっ…やだっ、」
逃げるように足を引くが、ジェイの腕がしっかりと押さえてしまって少しも動くことが出来ない。わずかに奥へと侵入してくる熱い舌の動きに、たまらなくなってペコはかぶりを振った。
「あ…っん、…んっ、はぁ…!」
わざとなのか、ジェイはぴちゃぴちゃといやらしい音を立てて責め立てる。
「やんっ、や…っ…あっ、…あん…っ」
知らないうちに腰が振れてしまっていた。ずっと奥まで刺激して欲しいのに、ジェイはじらすかのように入口ばかりを責め、立ち上がりかけているものにすら触れてくれない。
「あん…っ、ね、ジェイぃ…」
甘えた声で名前を呼ぶと、不意にジェイは身を起こし、背中に覆いかぶさってきた。
「なに?」
「や…っ、も、入れて…っ」
そう言ってペコはねだるように腰を振る。
「その人にもそう言ったの?」
くすくすと笑いながらジェイはペコの体を仰向けにして、ベッドサイドの箱からゴムを取り出した。そうして自分のものに取り付けながらそっとペコのふとももを撫でさする。びくびくと震えながらペコはきつく目をつむり、我慢出来ずに熱い息を吐き出した。
「ね、早く…」
「そんなふうに誘った?」
「誘ってなんかないよぉ…なんでそんな、意地悪言うのぉ?」
「僕にも一応、男としての矜持がありますしね」
ジェイはペコの熱い頬に手を添えると、そっと口付けた。
「嫉妬もするんだよ。知らなかった?」
「やぁ…ね、ジェイぃ」
体の奥で高まった熱に浮かされたように、ペコは潤んだ瞳でジェイを見上げ、腰をくねらせてはせがんでみせる。ジェイは笑いながらペコの髪を撫で上げた。
「欲しいの?」
「欲しい…、ジェイの、早く入れて…っ」
ジェイはそっとペコの頬にキスをし、両足を抱えてゆっくりと押し入ってきた。
「あ…あっ、…はぁ…!」
体を貫くものの熱さに、ペコは思わず身悶えた。もどかしげに両手を引くが、勿論自由になるわけではない。ジェイはそんなペコをおかしそうに笑って見下ろしながら、そっと腰を引き、また突き上げる。
「あぁ…っ、あ…ん! …っは、あん…っ」
ジェイはペコに覆いかぶさり、腕を押し上げ、ベッドに押し付けた。ペコは一瞬ぎょっとしながらも、体の奥で肉がこすれあう感触に再び陶然となった。
「あんっ、あ…っ、はぁ…っ! …あっ、…あん…っ」
「どう?」
「え…あん! や…ぁっ、あっ! …はぁ…っ」
「その人と、どっちがいい?」
そう聞きながらジェイは耳元を舌でくすぐった。それは下半身に向けた鈍い刺激となって走り抜ける。ペコはたまらなくなって腕を引くが、ジェイは強くベッドに押し付けて放さない。自由にならないもどかしさが何故か快感をあおり、ジェイのものをきつく締め上げてしまう。
「あんっ、…あ…! ジェイ、の…っ」
「僕の?」
「は…っ、あんっ、…ジェイの方が、いい……あんっ、あ…やぁ…っ!」
突然ジェイの突き上げが激しくなった。容赦のない突き上げにペコは嫌々をするようにかぶりを振り、大きく背中をのけぞらせる。
「あんっ、あ…っ、あっ! あ…んっ、ん…っ! あんっ!」
「いつもより感じてるしね」
「ジェイだ、ってぇ……あぁっ! あんっ、…はぁ…っ!」
いつも以上に体の内側を圧迫されている。互いにひどく体を熱くさせながら夢中になって腰を動かしている。
「あっ、や…んっ、んっ! あんっ、あ…ぁっ!」
「そんな顔されたら、誰だってたまらないよ」
そう言ってジェイは小さく笑い、唇を重ねた。熱い息を吐きながら舌を絡ませ、やがてペコの体を抱き上げた。
「や…っ」
ベッドの上でつながりあったまま、向かい合う恰好で座らされた。自分の体重のせいでずっと奥までジェイのものが入ってきており、快感と苦しみの為にめまいがしそうだった。深く息を吐きながらすがるようにジェイの首にしがみつき、途切れ途切れの息の合い間にまたキスをねだる。
舌を絡ませながらジェイはペコの両足を抱えた。そうして唇を離すと、そのままペコの体を持ち上げ、おろしてみせた。
「や…っ、やぁっ! や…っだ、ジェイ……あぁっ!」
おろされる勢いでひどく奥まで突き入れられた。しがみつこうとしながらも縛られた腕ではそれもままならず、ペコはただ悲鳴をあげるばかりだった。
「やんっ、やっ…あんっ! あ…っ、はぁっ! あ…んっ!」
「そんなに締めたら痛いよ、ペコ」
「や…っ、してな…っ、あん! あっ、や…っん! ん…っ」
肉のこすれる感触にたまらなくなり、ペコの目からいつしか涙がこぼれた。体の奥の熱はどこまでも上がり続けている。ペコは快感の波にひたすら溺れ、我を忘れて嬌声を上げた。
「あんっ! は…っ、あぁっ、あっ! あ…ぁっ!」
「気持ちいい?」
「いい……あっ、…もっと、してぇ……はあっ! あんっ、…あっ、あぁ!」
もはやなにも考えられない。目の前に居るのが誰なのかもすら忘れていた。ただつながる部分にのみ意識を集中させて、高みへ到達しようと、そればかりを考えている。
「あんっ! やっ…! はあ…っ、あっ! やぁ…っ」
ジェイはやがてペコの体をベッドに寝かせ、うつぶせにすると腰を高く持ち上げた。そうして再び激しく突き上げた。
「あぁっ! あんっ、あ…んっ、は…! あっ、やぁ…あ!」
なのにどういうわけか、あともう少しというところで突き上げが止んでしまう。
「やだぁ…っ」
せがむように腰をくねらせると、一度深く突き入れながらジェイはペコの背中に覆いかぶさり、首筋をきつく吸い上げた。うなじにかかる熱い息にペコは身悶えし、指先でシーツを引っかき、同じように熱いため息を吐く。
「ペコ」
熱っぽい声で名前を呼ばれ、
「も、イかせてよぉ…スマイルぅ…っ」
無意識のうちに日本語でそう呟き、涙をこぼしながら気持ちのいいシーツをぼんやりとみつめた。
不意に誰かの手が乱暴に頭を撫でた。そうしてまた突き上げが始まった。
「あんっ! あっ…あぁっ! やっ…んっ、」
突然ものに手が触れ、大きく包み込まれた。ペコはびくりと体を震わせてかぶりを振った。
「やだ、や…あっ! あん…っ! あ…っ、駄目ぇ、や…っ…あ…っ!」
突き上げられると同時にものへの刺激が始まり、ペコはもはやどうしようもなくなった。喉が嗄れるほどにあえぎ声を上げ、ただ達することだけを目指して腰を振る。
「あんっ! あ…あぁっ! あ…んっ、も…やぁ…っ、…イク…っ、イク…っ!」
そうしてペコは、信じられないほどの快感のなかで熱を吐き出した。
体を激しく痙攣させ、切れ切れに息を吐き出して、無意識のうちに指先でシーツを引っかいている。そうしてそのまま引きずられるようにして意識を失った。